利用し始めた当初はちゃんと続けられるか不安だったが、1年経ったいまでも無事に続けられている。
というよりむしろ、私の勉強の中核を担っていると言っても過言ではない。
以前、利用し始めて間もない、MOOCすげぇとハイテンションな時期にMOOCの感想を書いたが、さすがに1年利用してきてそんな熱も冷めたので、もう少し冷静な感想を改めて書いてみる。
(私は自然科学、特に数学・物理の授業ばかり取っているのでかなり偏った感想である。また日本の理系大学生ということも忘れないで欲しい。)
- 修了証(statement of accomplishment)獲得まで至った授業
coursera: Learn to Program: The Fundamentals
coursera: Introduction to Engineering Mechanics
coursera: Physics 1 for Physical Science Majors
coursera: Calculus Two: Sequences and Series
coursera: Applications in Engineering Mechanics
coursera: Statistical Molecular Thermodynamics
coursera: Massively Multivariable Open Online
edX: PHYS102x: Electricity & Magnetism
edX: 8.01x Classical Mechanics
edX: MAS.S69x Big Data and Social PhysicsUdacity: Intro to Physics
これに加えて、現在受講中の
edX: 8.MReVx Mechanics ReView
Stanford OpenEdX: Computer Science 101
も修了証が獲得できることが確定している。
また、リアルタイムでの受講は出来なかったが、アーカイブに入っている
edX: 8.02x Electricity and Magnetism
edX: 6.041x Introduction to Probability - The Science of Uncertainty
も利用した。
私の感想は主に上記15コースに基づく。
- courseraとedXの比較
他の方のMOOCの感想を見るとcourseraの方が人気そうだが、個人的にはedXの方が好きだ。edXというか私の場合MITの授業と言ったほうが語弊が少ないかもしれない。
開講している分野の広さや、授業の数では圧倒的にcourseraの方が勝っているが、受講終了後の満足度ではedXの方が勝る。
courseraの場合、週の目安の勉強時間が5〜7時間、受講期間6〜10週間といった授業が多いが、edX(特にMIT)の授業の場合、週の目安の勉強時間が12時間、受講期間15週間といった正真正銘の大学レベルの授業がごろごろある。一度こういった本物の大学レベルの授業を受けてしまうと、目安の勉強時間5 hr/weekの授業は簡単すぎると感じる。
またcourseraにある授業は実際の大学のレベルよりも相当レベルを落としている気がする。実際、留学生(英語が母国語)が「coursera簡単すぎるんだけど、edXってどう?」と私に聞いてきたこともあった。
ちょっと興味のある分野の勉強や、すでに勉強したことのある分野の復習等ではcourseraくらいの手軽さがありがたいのだが、ある分野をしっかり学びたいと思うと、courseraでは物足りない。
ただ結局のところ、私がedXにこだわるのはMITが授業を出していることが大きい。8.01x Classical Mechanicsで初めてMITの授業を受講して以来、MIT OCW Scholarも含めMITの授業をいくつか受けてきたが、どれも私の知的欲求を大いに満たしてくれた(edX: MAS.S69xは授業でなく宣伝なのでここに含めない)。今のところMIT以上の授業を見たことはない。
またMITはOCWを始めたことで有名だが、それもあってかオンラインエデュケーションに対する異常なまでの意地を感じる。おかげで授業の質が非常に高い。
講義動画の合間に入る演習問題も、絶妙なタイミングで、絶妙な問題が入ってくる。おそらくOCW Scholarで培った経験が生きているのだろう。
講義動画の合間に入る演習問題も、絶妙なタイミングで、絶妙な問題が入ってくる。おそらくOCW Scholarで培った経験が生きているのだろう。
- OCWの有用性を再認識
MOOCは本当に便利(もちろんショボいものもあるけど)でこれを使ってどんどん勉強したいと思っているのだが、如何せん、私の興味のある自然科学は需要が少ないので、開講されるコースも少ない。例え興味のある授業が開講されてもMITのEffective Field Theoryのように、難しすぎて受講を断念せざる負えない場合も多い。
Computer Scienceは常に色々な難度の授業が開講されているので結構融通が効く(と思う)が、自然科学だとなかなかそれが難しい。こういった時どうしたら良いかと考えた結果、最終的にOCWに戻ってきた。OCWだと1人で進めるのが大変ということでMOOCを主に使うようになったのだが、原点回帰した。
それでもやはり、宿題の期限などがないので、どうしてもだらだらとやってしまいがちであるのだが。
それでもやはり、宿題の期限などがないので、どうしてもだらだらとやってしまいがちであるのだが。
短時間かつ自分のペースで進めようと思ったらやはりMOOCよりもOCWかなとは思う。理想はUdacityのようにMOOCの形態で自分のペースで進められる授業。実際MIT OCW Scholarの8.02よりもedXのアーカイブになっている8.02の方が使いやすい。というか自動採点機能が楽。
- JMOOCには失望した
設立の動機が海外で流行ってるから日本も世界の流行に遅れないように参加しなきゃといった感じで、なんとも受け身な動機の時点で良いものは出来ないだろうなと思いつつも、頑張って欲しいなぁと思っていた。だが、やはりというべきか何とも残念なものが出来上がったなという印象。
試しにJMOOCの一つであるgaccoの授業を一つ取ってみたが如何にも日本の授業といったかんじ。きっとcourseraやedXの授業なんて見たことないんだなぁと思った。
gaccoのトップページには以下のように書かれている。
私の感覚からすると開講されている授業は大学レベルではないし、本気の授業とも思えない。日本の大学の基準で考えたらそうなのかもしれないが、少なからずMITの授業を基準にすると大学レベルというには程遠い。
私の経験上、1週間の目安の勉強時間別に授業のレベル分けるとこんな感じだと思う。
〜4時間 : 大学の公開講座レベル。誰でも受講可能。
4〜7時間 : 全学教育科目(教養)レベル。高校レベルの知識が必要。
7〜10時間 : 専門選択科目レベル。全学教育科目(教養)レベルの知識が必要。
10時間〜 : 専門必修科目レベル。全学教育科目(教養)レベルの知識が必要。
gaccoの授業は1週間の目安の勉強時間3時間、受講期間4週間というのが多いようなので少なからずアカデミックな内容では無いと思う。そもそも受講期間4週間程度で何が身につくのだろうか?
でもまぁ、gaccoの受講者の平均年齢は46歳と高めらしいので、これくらいのぬるい授業のほうが需要としてはあっているのかもしれない。
ここまでであれば、まぁ日本だしこの程度だろう思えたのだが、"JMOOC公認サイト「gacco」の第一弾講座で、受講者の18%が修了、反転学習コースでは80%が修了" という発表を見て、もう日本じゃまともな教育は受けられないんだと確信した。
確かにMOOCで18%の修了率というのは高いことには高いけれども、問題は次の一文。
edXの授業を受けたことがない人は「日本すごいじゃん」と思うのかもしれないが、edXとgaccoでは格が違いすぎる。
まず、比較対象となっているedX、というかHarvard University, MITは言うまでもなく世界のトップ校である。日本トップの東京大学とはわけが違う。世界のトップゆえ、どんな授業をしているのだろうと世界中から冷やかしで登録する人が多くいるだろう。その証拠に841687人の登録者のうち、292852人は登録しただけで講義ビデオを見てすらいないのだ。(gaccoの詳細なデータがないのでなんとも言えないが、修了率18%ということから脱落した人でも最初の講義ビデオくらいは見ているんではと推測する。)
また真剣に取り組もうと思っても授業は容易くついていけるようなものではない。以下の表は各コースの開講期間と週の目安の勉強時間である。
一方、gaccoの第一弾講座としてあげられている東京大学 本郷和人 教授の「ga001: 日本中世の自由と平等」は受講期間4週間、週の目安の勉強時間は3時間程度である。MITの授業と比較したらMITの授業の1週間にかける勉強時間で、東大の授業内容を全て勉強できてしまう。
これでもなお修了率18%がすごいと言えるだろうか?私としてはむしろedXのこれだけハードな授業で修了率5%のほうが驚きである。
gaccoも「やる気がないならついてこなくていいよ」といった感じの強気の授業を出せばもう少しマシになるんだろうけど、きっと日本じゃ無理だろうなぁ。
日本の大学の先生は研究者であって教育者ではないから授業は下手だし、受講者も受講者で大学の単位になるわけでもなく、社会に認められるわけでもないから、本気で取り組む人も少ないだろうし。受講者が本気で取り込まないのなら先生もその分手を抜いた授業をして、やる気のない授業が面白いわけないから受講者はさらに適当に受講し・・・と負のスパイラルである。
もちろん、まだ始まったばかりだから今後どうなっていくかはわからないが、始めからこんなぬるい授業ばかりならあまり期待できそうにないとは思う。
私の経験上、1週間の目安の勉強時間別に授業のレベル分けるとこんな感じだと思う。
〜4時間 : 大学の公開講座レベル。誰でも受講可能。
4〜7時間 : 全学教育科目(教養)レベル。高校レベルの知識が必要。
7〜10時間 : 専門選択科目レベル。全学教育科目(教養)レベルの知識が必要。
10時間〜 : 専門必修科目レベル。全学教育科目(教養)レベルの知識が必要。
gaccoの授業は1週間の目安の勉強時間3時間、受講期間4週間というのが多いようなので少なからずアカデミックな内容では無いと思う。そもそも受講期間4週間程度で何が身につくのだろうか?
でもまぁ、gaccoの受講者の平均年齢は46歳と高めらしいので、これくらいのぬるい授業のほうが需要としてはあっているのかもしれない。
ここまでであれば、まぁ日本だしこの程度だろう思えたのだが、"JMOOC公認サイト「gacco」の第一弾講座で、受講者の18%が修了、反転学習コースでは80%が修了" という発表を見て、もう日本じゃまともな教育は受けられないんだと確信した。
確かにMOOCで18%の修了率というのは高いことには高いけれども、問題は次の一文。
今回の講座の修了率は、米国のMOOC「edX」が開設初年度に開講した講座の平均修了率(5%)※2を大きく上回る結果となりました。比較相手が悪すぎる。以下の表がedXの修了率5%の根拠となっている表であり、これを見ると確かに修了率は5%である。
edXの授業を受けたことがない人は「日本すごいじゃん」と思うのかもしれないが、edXとgaccoでは格が違いすぎる。
まず、比較対象となっているedX、というかHarvard University, MITは言うまでもなく世界のトップ校である。日本トップの東京大学とはわけが違う。世界のトップゆえ、どんな授業をしているのだろうと世界中から冷やかしで登録する人が多くいるだろう。その証拠に841687人の登録者のうち、292852人は登録しただけで講義ビデオを見てすらいないのだ。(gaccoの詳細なデータがないのでなんとも言えないが、修了率18%ということから脱落した人でも最初の講義ビデオくらいは見ているんではと推測する。)
また真剣に取り組もうと思っても授業は容易くついていけるようなものではない。以下の表は各コースの開講期間と週の目安の勉強時間である。
Institution | Course | Course Length / weeks | Estimated effort / ( hr / week ) |
Harvard
| HealthStat | 13 | 10 |
CS50X | ? | ? | |
JusticeX | 12 | From 2:00 hours a week to a lifetime | |
HeroesX | 17 | Instead of traditional weeks or chapters, the content for this course is divided into 24 "Hours." Participants can expect to spend about 3-5 hours of their time to prepare and engage fully in each Hour of course content. (17 weeks) | |
HealthEnv | 12 | ? | |
MIT
| Circuits-2 | 16 | 12 |
CS-1 | 9 | 12 | |
SSChem-1 | 16 | 12 | |
CS-2 | 9 | 12 | |
SSChem-2 | 16 | 12 | |
Poverty | 14 | At least 6 | |
E&M | 17 | 8〜10 | |
Circuits-3 | 16 | 12 | |
Biology | 12 | 7〜14 | |
Structures | 12 | 12 | |
MechRev | 15 | 8 |
一方、gaccoの第一弾講座としてあげられている東京大学 本郷和人 教授の「ga001: 日本中世の自由と平等」は受講期間4週間、週の目安の勉強時間は3時間程度である。MITの授業と比較したらMITの授業の1週間にかける勉強時間で、東大の授業内容を全て勉強できてしまう。
これでもなお修了率18%がすごいと言えるだろうか?私としてはむしろedXのこれだけハードな授業で修了率5%のほうが驚きである。
gaccoも「やる気がないならついてこなくていいよ」といった感じの強気の授業を出せばもう少しマシになるんだろうけど、きっと日本じゃ無理だろうなぁ。
日本の大学の先生は研究者であって教育者ではないから授業は下手だし、受講者も受講者で大学の単位になるわけでもなく、社会に認められるわけでもないから、本気で取り組む人も少ないだろうし。受講者が本気で取り込まないのなら先生もその分手を抜いた授業をして、やる気のない授業が面白いわけないから受講者はさらに適当に受講し・・・と負のスパイラルである。
もちろん、まだ始まったばかりだから今後どうなっていくかはわからないが、始めからこんなぬるい授業ばかりならあまり期待できそうにないとは思う。
参考